クラシックギターっていい感じ?
いきなりこんなこと書いて申し訳ないのですが、クラシックギターって、好きですか?
どうなの、そこんところ?
わるいんですが、 自分は正直、チェロにあこがれていました。いきなり裏切り者みたいでもうしわけない。
小学校の音楽の授業で、サン・サーンスの「白鳥」や、ロッシーニ「ウィリアムテル序曲」のチェロ重奏を聴いて、もうすっかりやられてしまったわけ。
チェロ最高、オーケストラやりたい!!
でも、田舎の小学校に通う身で、しかも音楽一家に生まれたわけでもなく、自分一人の願望でチェロ奏者への道なんて開かれるはずもなく、じゃあまあしかたないから、中学に進んだから音楽室にあるギターでもやるか、弦が張ってある楽器だし、少しは似てるだろ、しょうがねえな、妥協だけど……
ま、多少の脚色はありますが、そんな感じっす。
でも、やっぱり「好き」と感じるからには、なにかしら可能性があったにちがいない。音楽ということももちろん、「弦楽器」ってやつが、自分にはかなりむいていたみたい。
クラシックギターは、チェロとはちがってフレットがあって絶対音感みたいなものは必要ないし、ナイロン弦は指にやさしくて時間を忘れて熱中できる。
安い自分用のギターを母に買ってもらい、いちおう中学の軽音部に所属して「歌は無理」と宣言し、一人でクラシックギターの練習ばかりしていました。
中一から独学で始めたわけですが、おぼえているのは中二の秋にトレモロの練習をし、冬には「アルハンブラの思い出」を弾いていたこと。
トレモロ練習秘策については別ページで説明させていただきます、おたのしみに!!
正直、大人になってからも「やれるものならチェロをやりたい」という願望は捨てきれず、数年前にこんなことがありました。
脱線ですみませんが、じつは”超本物”を弾いてしまったのだ……
チェロ体験で悟る
秋に皇居北の丸公園で開催される「弦楽器フェア」(新コロナで中止の場合あり)というものがあります。内外の製作家やディーラーたちが集う、クラシック音楽専門の楽器見本市みたいなもの。もちろん自分はギター目的で行ったのですが、ふと、通りがかりに閑そうにしていたチェロブースのスタッフさんに話しかけてみたのです。
「自分はギターのために来たけど、子どものころからチェロにあこがれてて、全然弾けないんですけど、ちょっといいっすか?」
勇気を出して質問してみたら「どうぞどうぞ」と笑顔で歓迎されてしまい、そっそく少し高くてまるで世の中が10センチほど上から見えるてきな専用イスに座らされて、「せっかくだから、これにしましょう」と一台のチェロを渡されたのです。
「これはどういう?」
「午前のコンサートで弾かれて戻って来たものです。せっかくなら、いいものがいいでしょ?」
「せっかくだから、ということですが、その”せっかくだから”の意味が自分にはよくわからないんですが、ちなみに、おいくら万円ほど?」
「これは600万円ほどですね」
にゃんと(≧◇≦)
そして、音を出してみて、ぶったまげましたよ。開放弦弾いただけで、なんじゃこりゃ、ヨーヨーマか!! ってくらいの雄大な音色が、王様のように朗々と響きわたる。自分は少しだけバイオリンはやっていたことがあるので、弓弾きはできなくもないんですが、そんな初心者の自分が弾いただけで、会場にひしめく群衆のざわめきを圧倒し、天空まで響くかのような轟音が響きわたる。
いやはや、すげーチェロでした。人の話し声で埋もれてしまうクラシックギターとは、ぜんぜん住む次元が違う。
でも、やっぱり手に力はかなり必要そうでした。たまたまステージ演奏用に強めの弦を張ってあり、つまりオーケストラ団員用ではなく、ソリスト設定だった、ということはあるんだろうけど、それにしてもあの凄まじい胴なりパワーに負けない演奏をしていくには、自分も肉食って筋トレしてタフにならないといけないと感じたし、なにより住宅環境もアラブの王様なみ、なんなら駐車場にカウンタックやマセラティが数台置いてある大邸宅でないと、そもそも練習もできないよ、あれ、って感じ。
本物チェロ、恐るべし、と、すごすごとクラギの小さな世界に戻る僕であった。
生の音
さて、とりあえず、こんなクラギの音色はどうなのか?
こんな感じは、どうでしょう。
えー、こんな音を出すの、お高いんでしょ?
……と思われる方もいらっしゃるかもしれないのですが、これはじつはYAMAHA/CG102。合板・入門ギターの自宅録音で、業界最安、約2万円。
同じ曲を、自分が普段使っているラミレス1aで弾くとこんな感じ。
たしかに名器の方が余韻も音量もリッチですけど、音楽を歌わせるという意味では、案外、大きな差はないですよね。安ギターでも、音楽は楽しめます。
ちなみに、機材関係に詳しい人用に付け足しておくと、録音に使用した音楽ソフト(LogicProX)の設定は完全に同じ。リバーブはセンドバスのみ、メインはリバーブなし、EQとコンプを少し。スプレッダーはステレオ感を出しているだけ。ボリュウムも同じなので量感差も実器のまま。もとの質感をのこしつつ、少し化粧したもの、という感じです。
要するに何が言いたいかというと、最近の入門ギターの工作精度は、あなどれないし、むしろすばらしい、ってこと。昔の安いクラギは、録音すると明らかにヘタっぽかったものですが、今のアジア製はあなどれない。
ちなみにヤマハは、もうだいぶ前からインドネシアと中国での生産を進めてるようです。
でも、これが悪くない。あちらでもきっちりと人材が育ってきていらっしゃるのでしょうし、IT機械工作精度の向上もあるでしょう。
音楽に、国境なんてない
Yes、そもそも、音楽に国境なんてない。
いい音を求め、音楽に心ふるえる、それはどこの国の人でもかわらない。
いい音、いい音楽の前では、日本人も、韓国人も、中国人も、インドネシア人も、ただの一人のHumanにすぎない。
僕は、本当に、心の底からそう思う。
たとえば自分の未熟な英語がうまく伝わらないアメリカに行っても、ギターでバッハを弾いたところ、いきなりリスペクトされた。それがめっちゃ嬉しかった。
そういうのって、すごく”いいことだ”と思う。
では、クラシックギターって、難しいのか?
難しいか難しくないかというより、どうしても向き不向きは、あるんじゃないかなと思います。
普段は仕事で疲れているし、一人のときはパンツ一丁になってゆるーいアニメでも見ていたい、……みたいな方には、やはりムリっぽいですよね。
でも、仕事や学校では満たされないなにかを、一人の時間に模索してみたい、たとえ立派な答えに至らなくても、自分なりの小さな答えを、自分の手で発見したい……そんなお考えの方は、やってみる価値、あるんじゃないでしょうか。
ソロ楽器の奥深さ。
そこに自伝で手をのばしてみる。
失恋したら失恋の音を、大切な人が死んだらその想いを、パチンコで勝ったらその歓喜を、それぞれ今の気分を、自分なりの音に託して出してしてみる。
すると、なんか知らずに、涙が流れている……
最大の欠点にして長所
クラシックギターの、欠点にして、同時に長所なのは音量が小さいことだと思います。
人前で弾こうとすると無理がありまくりだけど(たとえば聞く人たちが全員、息もこらえるくらい集中してくれれば、30人くらいの前で演奏することは可能ですが)、逆にいえば、小音量なので、自宅でわりと気兼ねなく練習できます。
実際のところは、だいたい「テレビを視聴しているのと同程度の音量」と思っていだければ。
つまり、深夜にテレビを普通に見ていたらうるさがられるけれど、みんなが普通に団らんしているくらいの時間であれば、テレビでもギターでも、社会的に敵視されることはおよそない、という感じ。
まあ、深夜なら深夜なりに、ごく微音で練習するのも、案外、細部チェックに役立ったりはしますけど……
この入門ブログについて
自分は、中学からクラシックギターを独学でやってきました。
近年は少しずつ教わりにいったりもしていますが、ながらく完全な独学。だから、いろんなかんちがいや、トンチンカンな試行錯誤を、さんざんしてきた上での現在となっています。
道は長かったけれど、逆にいえば、指導者の下で学んできた人たちは知りえない裏道や、そっちに行ったらヤバイよ的なところまで、けっこう体験して知っている、ということは言えるかと。
そのへんを活かして書いていきたいし、楽しく読んでいただければ幸いと思います。
「クラシックギター入門 in LoopyHill」は、あくまで「アマチュアギタリストの個人的経験と知識に基づくもの」ということで、本当に自分がこんなこと書いていいのかって感じですが、音楽はすべてを超越してすばらしいので、よしなのだ。
では、これからクラシックギターについて書き綴ってみようと思います。
(「今から始まるんかい!!」という例のツッコミ)
コメント