ギターを弾いたからといって、ぜいぜいと息が切れて汗だくになるということはないんですが、しかし筋肉の動きによる行為という意味では、スポーツと同じですよね。
たとえば、テニス好きの人が、こんなことを語っていました……
「最初はパワープレイですよ。いきなりコースを正確にねらいにいってもうまくいかない。最初の1~2年はホームランOK。ガンガン打って、まずは筋肉を作る。正確さを求めるのは、そのあとの話」
ギターも同じだと思います、まずは筋肉を作りましょう!!
……でも、どういう筋肉?
筋肉マッスル
めっちゃわかりやすいので、僕の手の写真をどうぞ。
ってやろうと思ったけど、自分の両手を自分で撮れないじゃん!!
イメージイラストで失礼します。
親指の根元の肉付きが、右手と左手とでは全くちがう、左の方がぶ厚い、となってくるのです。
自分でも驚くこのちがい、なにこれ、気持ち悪ーい、みたいな。
なぜこうなったか……
右手は、速度とタイミングが要求される、スピード重視。
左手は、とにかく力、ベースとなるパワーがないと何も始まらない。
ほかの人の手を見させてもらったことはないんですが、自分のこの差異は、わりと早くから意識していました。「わかったぞ、左手は筋肉なのか」と、あえて大食いを意識していたこともあったし……
大食いって、じつは筋肉を太らせる場合の基本だそうです。ボディビルダーさんがテレビで語っていました。消費する分だけ食べていては、筋肉は太らない。常に余剰する心構えで食生活を送る、それが筋肉を作るのです。余剰な脂肪や炭水化物はよくないだろうけど、タンパク質はそんな感じで。特に鶏肉は脂肪が少なくてタンパク質摂取にうってつけとか。
最初のうちは、よく食べて、ガンガン強く弾く、って感じがおすすめです。
ヘタだって、かまわない。少しくらい太ったってかまわない。まずは筋肉作りから!!
脱力系
しかし、いつまでもそのままでは、いろいろとダメなパターンにむかってしまいます。
というのは、クラギは音が小さいので、ただでさえ人前で弾こうとすると無理に力を入れてしまいがち。それが当たり前と思っちゃうと、強すぎる汚い音で弾きつづけるパターンへと。これ、けっこう少なくない。こうなると、家族からクレーム、猫も逃げる、美女も遠ざかる、運も逃げる、という、なんとも悲惨な演奏スタイルが定着してしまいかねないのです。
クラシックギターの脱力というのは、自分の感覚ではこんな感じ……
我々は、左手で弦を正しく押さえて、右手の指先ではじく、人としてできるのは、泣いても笑ってもそこまで。あとはギター様に「鳴っていただく」のです。
ビブラートとかも、あるっちゃありますけど、基本的に人としてできるのはそこまで。
「鳴らぬなら、鳴らしてやろう」ではなく、段取りを整えたら、あとは美しく「鳴っていただく」という、一歩引いた選択。
「さあどうぞ、ギター様、お鳴りください」って謙虚に響かせてみると、じつはギターって、とてもいい音で鳴ってくださるのだ。
これは、クラシックギターでも、アコースティックギターでも、まったく同じ。しかも美しく響かせることを続けていると、木材がその繊細な響きになれていって、日々、どんどん美しくなっていく。
それが、すっごく嬉しい!!
他の楽器だと、どうなんでしょうね。「けいおん」でエレキギターのユイちゃんは「やさしく、ゆる~く、弾くんだよ~」と言っていましたが……
筋肉をつける運動
ちなみに、手の筋肉をつけるというと、まずハンドグリップが思い浮かびますよね。しかし、楽器演奏は、ダメです、断言するけど、あれをやると下手になります。
というのは、あれは「握る力」だけをつけるものだから。楽器では「握る力」と、逆の「開く力」、両方が必要なのです。むしろ「開く力」の方が大切かもしれない。日常生活では使わない「開くスピード」ってやつ。
だから、おすすめは「お風呂の中のグーパー」です。水の負荷なら、すべての筋肉がまんべんなく鍛えられます。「わたし、Fのセーハきついな」とか、そんなときにはお風呂でグーパー。100回くらいが基本だと思うけど、高速200回やるとけっこう痛くなる。でも大丈夫。筋肉が疲れたら、そのままお湯の中でもみほぐしてね。
使うべき筋肉とは
さて、ここで斬新、かつオリジナル(たぶん)の、特別知識をご紹介してしまう。
ギターを弾く筋肉は、大きく分けて2種類なのです!!
右でも左でもどっちでもいいけど、片方でもう片方の二の腕の筋肉を持って、空いている手でグーパーしてみてください。 指が動くと、二の腕の筋肉が動いているのがわかると思います。あたりまえっちゃあたりまえだけど、実際に触れてみるとすごいもんですよね。
じつは指って、腱(すじ)でつながっている「腕の筋肉」が動かしていたんです、知ってましたか? だからあんな小さな指でも、重いボストンバックをもてたりする。そのくらいパワフル。
しかし、指先を、腕の筋肉で動かすとなったら、けっこう遠いし、伝達時間もかかるし、なにより不正確になりがち。0.1ミリの正確さを、なんて無理。パワーはあるんだけど、演奏としては、なるべくここには頼りたくない……
では、ほかに何があるのか?
「指先を動かす腕の筋肉」とはべつに、「手の平の中の筋肉」があるんです。僕は解剖医学の専門家ではないので筋肉の分類までは知りませんが、ネットで調べると手内筋ってやつらしい。(読み方わからない……てなかきん? しゅないきん?)
大切なのは手中筋
さきほどの二の腕をつかむやつで実証できます。
第1関節と第2関節を、グーパーのように動かすと、腕の筋肉がグイグイ動きます。
でも、指の根元の第3関節だけを動かすなら、二の腕の筋肉はあまり動かないんです。まあ完全に独立して動かすのは難しいから、少しは動いてしまうけど、そのちがいはわかっていただけるかと。
手内筋は、小さな筋肉の集まりだしパワーはないけど、繊細で、指の回転角も調整できるし、なにより「現場に近い」のでスピーディに即対応!!
よくプロの演奏動画を見て「なんであんなに速く動くんだろう」とだれでも疑問を持つと思うけど、おそらく「手内筋で弾く」というのが答えなんです。てか、自分はそう信じてる。
一般的にギター教師は脱力を説くようですが、自分にいわせれば、それは脱力なんかではなく、使う筋肉がちがう、ってこと。
たとえばスラーを、第1関節第2関節(二の腕の筋肉)でやっていたものを、第1関節第2関節をなるべく使わず、第三関節を意識して手中筋でやると、どれほど全体がサクサクになることか。
手中筋を使うと、手の中が熱を持ち、ほてってくるのがわかる。
これこそが伝説の究極極意、秘技・手中筋奏法だ(≧◇≦) (てなかきんそうほう? しゅないきんそうほう?)
近接系・遠距離系
ゲームでたとえればこんなかんじ。
実際の戦闘でも(まあゲームですが)、ログレンジ砲や重爆撃で制圧するには、いったん前衛の兵たちが退避するじゃないですか。そして長距離攻撃が終わったあとに、再び歩兵たちが展開、敵を制圧する、と。
ギターもそんな感じ。
重い攻撃は効果的だけど、不正確だし、時間の間が空いてしまう。だからなるべく後方支援には頼らず、前線の兵だけでサクサクすすめていくのが理想。
もちろん初心者の方は、どうしても手中筋は育っておらず、あまり使えないと思います。
でも、なんとか手の中の筋肉を育てて、自然に使えるようになってくると、明らかに上達するのが感じられると思います。
ギターの神さまとも言われるセゴビアの動画をネットで見ると、手のムチムチぶりがすごいですからね。ふあれんばかりの手内筋。
昔は「セゴビアさんってただ太ってるだけじゃん」と思っていたけど、筋肉の理屈がわかってくると、あのムチムチの手には大きな意味と美音の秘密があったのだ、と理解しました。
この遠近両方の筋肉への理解と、最適化された使い分けこそが、必ずや、君をビクトリーへ導くであろう。
サンバーストも、タンゴアンスカイも、怖るるに足らず!!
蛇足
二つ、蛇足。
筋肉をつける、って大変そうですが、要はニーズがあるかどうかってことだと思います。
毎日のように楽器に触れて、音楽に心奪われたり、うまく弾けなくて悩んだり、指が痛かったり、ということを「続けて」いれば、ちゃんと身体は応えてくれるはず。
もちろん若い人ほど優位だろうけど、歳を重ねた人でも、けっこう変化はあると思う。おそらく音楽というものが脳神経への刺激になるから。
感情のゆれ動く音楽ってやつは、ただの運動とはちがうのだよ、ただの運動とは!!
しかし、こうやって楽器用に手内筋を鍛えてしまうと、たいがい「字は下手になる」という副作用が……
弦楽器だけでなく、クラリネットなど木管の人もそうみたい。手に力を入れて弾くタイプの楽器を習得している人って、たいがい書く字が子供みたい。
僕の字がヘタなのは楽器のせいです、と説明すると「アホか、そんなのいいわけ!!」と無理解な否定をされがちですが、きっと、やればわかると思います。わかってくださいお願いします!!
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